サルコイドーシスについて
1. サルコイドーシスとは
サルコイドーシスは原因不明の多くの臓器に発症する疾患です。
この病気は、全身のいろいろな臓器(頻度が高いのは両側肺門リンパ節、肺、眼、皮膚、唾液腺、心臓、神経、筋肉など)に、結核によく似た病巣を作ります。
一般にそのような病巣は「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」と呼ばれています。罹患部位から採取された組織標本に「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」が存在すれば確実となりますが、しかし前述のように、現在までその原因は明確にされていません。
サルコイドーシスの本体は、感染症ではなく個体のもつ異常な免疫反応と推定されます。もちろん悪性新生物でもありません。 認められる症状は罹患する臓器によります。
目のかすみ、視力低下、咳、呼吸苦、色々な皮膚の発疹、不整脈など、肉芽腫が出来た臓器の障害として出現します。
しかし一定の病変の拡大が認められる前は多くは無症状で、患者さんの約40%は気付かない人がおられます。住民検診や職場検診は今でも重要です。 節性紅斑を伴う急性発症例や無症状の両側肺門リンパ節腫脹の例は、通常は自然経過で消退することが多いのですが、潜行性発病例、特に多臓器に肺外病変のある例は慢性に進行することが多く、肺やその他の臓器の線維化に進展することがあります。
副腎皮質ホルモン剤は症状を改善させ、肉芽腫形成を抑制します。 資料:胸部X線写真
2. この病気の原因はわかっているのですか
定義で述べましたように現在は不明です。しかし、病理組織が示しますように、結核を始めとする感染性肉芽腫性疾患の組織像が大変似ていることから、以前より何らかの感染症が関与しているのではないかと考えられてきました。現在日本では嫌気性菌のpropionibacteriumacnesとp.granulosumの遺伝子が肺やリンパ節などがら証明され、これらの菌が原因菌の一部として研究の対象となっております。欧米ではLー型結核菌、ウイルス、自己免疫などとの関係の報告もあります。
3. この病気ではどのような症状がおきますか
症状は罹患臓器によって異なります。症状の出現頻度からみますと眼、皮膚、肺の順で多く、眼では霧視(霧がかかったようにぼんやり見える)、羞明(まぶしい)、飛蚊症(ちらちら視野に小さいものが移動する)などが出現します。皮膚では各種の皮疹が出ますが、結節型(円形~楕円形の隆起した紅色~暗紅色の鱗屑を伴う硬い皮疹)、局面型(円形~楕円形の辺縁の隆起性で内面は萎縮性の柔らかいの皮疹)などが多いようです。肺病変の自覚症状は咳、呼吸苦などがあります。また心病変の自覚症状は不整脈が最も多く認められます。しかし約40%の患者さんは自覚症状に乏しく健康診断で発見されています。
4. この病気にはどのような治療法がありますか
この病気は約70%は症状の有無に係わらず経過観察されています。治療の適応は難しい問題ですが、治療は症状の出現が毎日の快適な生活を障害するか、放置すると生命の危険が推測される時に行われます。一般には許されるかぎり3~6カ月は細心の注意を払い経過観察し治療適応を決めます。しかしこの決定は熟練を要しますので専門医に相談されることが大切です。治療の第一選択薬はステロイドホルモンです。治療法は臓器の種類と重症度によって投与方法、量、期間、中止の目安などが異なります。また再発症例、難治化症例などでは免疫抑制剤なども使用されます。また心病変(特に完全房室ブロック)に対してはステロイド治療と共にペースメーカー装着が必要な症例もあります。